【感想】ジョジョ・ラビット

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◯ストーリー

この作品は基本的にコメディです。コメディ作品と言えば現実から抜け出したような面白い世界であったり、独特なキャラクターが出てきたりなどとにかくおもしろおかしく描くことが多いと思いますが、この作品では違います。10歳の少年のジョジョの純粋さからくる行動で笑いを誘うので全体的にリアルな描かれ方をしています。また、そのリアルな描かれ方が逆に恐怖感も演出しています。というのも、子供たちがヒトラー政党に完全に服従している描写が恐ろしく、心が痛みました。でもそこで終わらせてしまったらただありきたりな戦争映画になってしまいますが、コミカルさを付け加えることで重い気持ちになりすぎずあくまでも「エンターテイメント」として映画を作り上げています。そして終盤の戦争が激化するシーンがものすごく心に響きました。今年になって第三次世界大戦が世界中でトレンド入りして雲行きが怪しくなっていた世の中であるからこそあのシーンが持つ力が強くなっています。

 

◯キャラクター

この作品ではジョジョという少年が主人公となっているわけですが、このキャラクター設定が模範的と言えるでしょう。憧れの人物がいて、想像力豊か、どこか母親に頼りがち。まさしく10歳の少年らしいキャラクター設定ですが、そこにアクセントとして可愛らしい夢がないという性格があります。ですがそんな子供もユダヤ人の少女との出会いによってだんだんと普通の子供らしくなっていく描写がまさしく理想的と言えます。また、ちゃんとヘイトを与えるべき人物も用意されていてキャラクターの作り込みは面白かったと思います。そしてジョジョの母親もなかなか興味深いキャラクターでした。当時の情勢の中ではかなりの狂人であったり、二重人格的なところもあったり。彼女の過去に何があったのかあえて描かれていないのが少し残念なきもしますがあそこにそれが入ってしまった時に作品が崩壊してしまうのではないかという不安もありますね。

 

◯音楽

ジュラシックワールドやローグワン、MCUスパイダーマンなどを手がけたマイケル・ジアッチーノが作曲というだけあって行進曲的な曲から感動的で優しさに包まれるような曲までものすごく良い楽曲が揃っていた印象です。また、ビートルズやデイビットボーイのドイツ語版も使われているので新鮮味のようなものがありましたね。

 

◯撮影技

なんというかカメラワークがジョジョ基準から第三者視点になると言った手法が多く使われていたように感じます。これは子供の視点から見た戦争のようなものをうまく表現できていたかなという感じです。とくにジョジョにとって大きな転機になるあのシーンあのシーンでは一切上の方にカメラが映りません。まあ、ショッキングな描写になることを避けるためであったのかもしれませんが、それがまたなんとも言えない悲壮感を演出しています。

 

◯まとめ

この作品はタイカ・ワイティティ監督の作品ということもあり『マイティ・ソー/バトルロイヤル』のような明るさも持ちつつ戦争による人間の愚かさをはっきりと表現しています。ヒトラーという人物のカリスマ性、それに洗脳される若者たち、それに抗えば殺される。そんな緊張感がその明るさというベールに包まれてより多くの人へ届くように作られています。これは名作『サウンド・オブ・ミュージック』に似ているなと感じる物がありました。以前、アカデミー賞作品賞の予想でこの作品を挙げましたが、そのポテンシャルは十分にあると思います。というか、この作品はこんな世の中だからこそもっと多くの人の目に触れられるべき作品であるとも思います。

 

今回紹介した作品

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